【読書】船山信次 『毒と薬の世界史』

 古代から現代までの「毒」と「薬」の歴史について語った本です。「世界史」という名がついているものの、ただ古代から、「こんな毒がありました」、「こんな薬がありました」というのを紹介しているだけ、「へぇ、そうですか~」という感想しか沸かず、感想を書きにくい本となりました。私、個人がおもしろいな、思ったのは

  • がぐや姫が公達に所望する「火鼠の皮衣」はアスベストだと思われる
  • 江戸時代に平賀源内がアスベストの作成に成功している
  • 小児ではタバコ1本のニコチンで中毒症状を起こし、心臓麻痺にいたって死ぬ場合も。ニコチンは水に溶けるので、もし小児がタバコを誤飲しても水を与えてはいけない
  • 北里柴三郎福沢諭吉の関係
  • 漆のはなし
  • スペイン風邪はアメリカ発だった
  • マンドラゴラ(マンドレイク

 別の本を探してあたってみたくなりました。とくに、北里柴三郎の伝記など、おもしろうそうです。新たな知識欲が沸き、作者に感謝したいと思います。

 しかし、本作では作者が自分の博識ぶりを披露しようとして毒や薬とは関係のない文章を入れてきたり、やたら「福音」「すなわち」という言葉を連発して、やや食傷気味になりました。

 さらに、「第二次世界大戦中、731部隊で生物化学兵器開発のためのおぞましい生体実験が繰り返された」という記述があり、その参考文献が森村誠一の『悪魔の飽食』と常石敬一氏の著作なのです。いろいろと真偽が問われる731部隊についてだからこそ、薬学者の視点から書いて欲しいと思いましたが、それはできなかったようです。

 

毒と薬の世界史―ソクラテス、錬金術、ドーピング (中公新書)

毒と薬の世界史―ソクラテス、錬金術、ドーピング (中公新書)

 

 

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