【読書】石川能弘 『花橘の乱 在原業平異聞』

  平安時代初期の在原業平を主人公にした小説。Amazonでは販売されておらず、私は電子書籍版を読みました。電子書籍版はどうやら紙の本の半額のようです。

 

 高子と別れた(別れさせられた)あとの在原業平を描いています。年齢にすると40歳過ぎです。在原業平といえば『源氏物語』のモデルの一人とも言われ、また『伊勢物語』の主人公とも言われています。平安の色好みとしてとても有名です。

 ちはやふる 神代も知らず 竜田川 

      からくれないに 水くぐるとは

                    (百人一首

 和歌を詠むのがうまく、ちはやふる~の歌は百人一首にも取られています。この在原業平が主人公です。

 舞台となる時代は日本史の教科書で言えば「応天門の変」のあたりの話です。太政大臣藤原良房、右大臣藤原良相、そして大納言伴善男。藤原家の人がたくさん登場して、頭が混乱するかもしれません。

 

 平安の都で若い娘たちが失踪する事件が立て続けに起こります。それを調べていた在原業平。調べていくうちに藤原家一族と伴(大伴)家の政治に巻き込まれていき、その中で、新たに恋をするわ、斎宮に手を出すわで・・・そして、応天門の変が起こります。

応天門の変」を覚えていれば、本を読み進めていくうちに最後の結末は分かってしまうのですが、応天門の変にいたるまでの藤原家の策略と、伴家の謀略、業平の義を楽しむことができます。最初は歴史小説なのかなぁ、と思っていましたが、読み進めていくうちに、これは在原業平で書かれたハードボイルド小説なのだと気づきました(笑)。失踪した娘たちを探す在原業平がひょんなことから美しい女性と知り合い、謎をとく過程で朝廷の政治に巻き込まれます。少しずつ明るみになる大いなる財宝。怪しい術を使うものの正体。そして対決。応天門の変のからくり。藤原家の力。死。

 在原業平フィリップ・マーロウを重ねずにはいられません。最後には38口径の銃を取り出すのではないかと思いました。最後の最後には在原業平だからこそできる方法を用いて、太政大臣藤原良房と対峙します。よほど男として自信のある人でないと不可能で、さすが平安の色男だと思いました。

 

花橘の乱―在原業平異聞

花橘の乱―在原業平異聞

 

 

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