第一回 平安美文字選手権
書店に行くとずらっと並んでいる『美文字』本。パソコンの使用で文字を書くという機会は減ったものの、まだまだ字を書く場面は多いはず。そんなとき、自分の字がもっとキレイだったらと思う人は多いはず。今日は、平安時代に生きた人々の文字を見比べて美文字な人を決めようと思います!作品の全部はe国宝から抜粋しました。
では、始めましょう!!
エントリーナンバー1;空海(弘法大師)
『弘法も筆の誤り』字のうまい弘法大師さえ間違っちゃう、ということわざが残るわけですから、相当な美しい文字を書くはず。それに三筆の一人なわけですから、期待大!
金剛般若経開題残巻
キレイですね。紙に墨で書かれた書物。文字は流れるようにかかれ、一文字一文字生き生きしていますね。
エントリーナンバー2;最澄
伝教大師筆尺牘 久隔帖
おお、なかなかきれいですね。でも、空海に比べて勢いがないというか、のびやかさがないというか。真面目な人柄が出ている文字ではないでしょうか。文字がだんだん左に傾いてます。
エントリーナンバー3;小野道風
今度は三跡の登場です!なんと道風さんは今までの中国風な書体から脱皮し和風なアレンジをあみだした人でもあります。見てください、この水が流れるようなひらがなを。
継色紙
文字もさることながら、空白の使い方もすばらしい。真ん中をあけてみちゃったり、左上に空間を作ってみちゃったり。小野道風のドヤ顔が浮かびますね。古今和歌集第十二残巻もe国宝にありますが、これも必見です。ちなみに道風さんの漢字も見てみましょう。
秋萩帖/淮南鴻烈兵略聞詰
かっこいいですね。
エントリーナンバー4;藤原行成
さぁ、またまた三跡の一人、藤原行成です。みなさんご存知の『枕草子』を書いた清少納言と関わりが深かったようですが、彼の文字はどうでしょうか?
白氏詩巻
一文字一文字がかっこいいですね。文字から漂うインテリのかほり。こんな文字で和歌を送られたら、「きゃー抱いて」ってなるかもしれません。
エントリーナンバー5;藤原公任
和歌よし、管弦よし、漢詩よし。そのうえ家柄もよくて、エリート街道まっしぐらな公任さんがエントリーです。『和漢朗詠集』はテストに出るぼでしっかり覚えておきましょう。他にも『三十六人撰』や『金玉集』などの「オレ様ベスト」を多数作った人としても有名ですね。
稿本北山抄巻第十
えらく、ちまちまと書かれた文字です。墨が裏移りしてしまっています。文字は意外と大人しく、高飛車な感じは見えません。育ちの良さでしょうか。
エントリーナンバー6;藤原定信
えっと、あなた誰ですか?・・・Wikipediaによると藤原定信さん、三跡の藤原行成の孫の孫にあたるようです。なんと、書家だけでなく鑑定師もやっていたそうで、エントリーナンバー5の藤原行成さんが書いた『白氏詩漢』の鑑定も後世やっています。
和漢朗詠集巻下断簡 帝王(唐紙)
字はさすが三跡の孫の孫。うまいですね。でも、勢いや流れるようななめらかさはひい、ひい、おじいさまには劣るかも。
エントリーナンバー7;藤原忠通
平安末期になり、平氏と源氏の武士達が実質的な力を発揮するようになってきたころ摂政・関白だった人です。崇徳天皇の後宮の女御に自分の娘を入内させ、のちに中宮にしますが、保元の乱(崇徳上皇VS後白河天皇)の際には後白河天皇についてます。
藤原忠通筆書状案
書状案とは手紙のテンプレートのことだそうです。力強い文字ですね。太く、ぷっくりっしています。紙に筆を置く一角目の瞬間、「ぐっ」という音が聞こえてきそうな文字です。
エントリーナンバー8;藤原定家
百人一首を作ったり、源氏物語、枕草子を写したりと後世に多大な資料を残した人です。平安も末期のころに生まれ、鎌倉時代の人といえばそうなのですが、私がすきなのでエントリーさせました。はい、八百長です。
明月記
あ、エントリーさせないほうが良かったかも。『明月記』は定家の日記です。誰かに見せることを想定して書いたものではないので、走り書きなのかもしれません。うん、きっとそうに違いない。
さぁ、ここまで8名のエントリーがありました。ここから大賞を決めたいと思います!大賞を決めるポイントは、私が「好きかどうか」です。
では、発表いたします!
大賞は・・・・(ドルドルドルドル・・・)←太鼓の音
ぱぱーん!
「大賞は・・・エントリナンバー」
「4!藤原~行成さん!!!!」
「おめでとうーございまーす!!888888」
この美しい品行方正な文字、漂う「仕事できちゃう男」感、すばらしいです!見ているだけで、私の文字もうまくなってしまうような、そんな気にさせてくれる書です。
さぁ、いかがでしたでしょうか。第一回 平安美文字選手権。お好みの書は見つけられたでしょうか。今回はe国宝だけからとりましたので、各地の博物館に所蔵されている書についてはエントリーできていません。きっと第二回、第三回と続くことでしょう。また、別の時代の書も比べてみるとおもしろいかもしれません。
では、次回お会いしましょう。さよ~な~ら~