【読書】モーム『月と六ペンス』

  証券会社で働く真面目な男が突然、子どもも妻も捨てフランスに行ってしまった。妻は夫に愛人ができたのだと言って聞かない。主人公の僕はその妻の代わりにフランスへ行き、夫と話をつけようとする。その夫は女と逃避行したわけではなく、絵を描くために家族を捨て、お金もほとんどない状態でパリに住んでいた。

月と六ペンス (岩波文庫)

月と六ペンス (岩波文庫)

 

  作家サマセット・モームが書いた小説『月と六ペンス』は画家ポール・ゴーギャンをモデルに書かれている。ゴーギャンは仕事を辞め、絵を描くことに専念し、妻子を捨てた。フランスで画家仲間ともめごとを起こし、タヒチに移るなどしている。

 このゴーギャンをモデルにしたストリックランドという男とその周りにいる人間の模様を、巧みな人間観察によって注意深く描写している。分かり合えない男と女と、分かり合えない芸術家と一般人。主人公の僕は作家という立場からこのストリックランドという男をずっと見ている。そして、彼に振り回される画家仲間やその妻の表面からはうかがい知ることのできない、行動の理由を少しずつあきらかにしていく。

女は、男が自分を傷つけた場合には相手を許すことができる。ところが、男が自分のために犠牲を払った場合には、相手を許せないのだ。    『月と六ペンス』岩波書店 2009 p.p257 

 

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