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【読書】S・ジョイス『兄の番人』

読書 海外文学

 『ユリシーズ』や『フィネガンズ・ウェイク』『ダブリナーズ』で有名なジェイムズ・ジョイスの弟スタニスロース・ジョイスの書いた兄についての作品。今は絶版のようです。

兄の番人―若き日のジェイムズ・ジョイス

兄の番人―若き日のジェイムズ・ジョイス

 

  ジョイスはアイルランド・ダブリンの育ちであったが、若くしてダブリンを離れている。ダブリンを離れた後もダブリンを題材に作品を書いていた。作品からは祖国アイルランドへの愛情も、そして憎悪というようなものも感じることができる。当時のアイルランドの情勢(アイルランドはイギリスの植民地であり、アイルランドの言語は禁止され、英語での著作していた)から、アイルランド文学、民俗としての文学を求められていた時代でもある。

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 *『ユリシーズ』の最初の舞台マーテロ・タワー。今はジョイスの記念館になっている→James Joyce tower(英語)

 

 有名な作家の弟という立場は人々が想像するよりも、きっと苦しいものに違いない。才能はあるが破天荒でエゴイストな、常人では考え付かないような感性をもつ兄と、常識ある一般市民としての弟では同じ物事を見たとしても全く違って見えたようだ。弟スタニスロースは兄ジェイムズのことを羨望と尊敬のまなざしで語ることもあれば、一部イライラさせられていたような節も見られる。『兄の番人』という題名からも。ただの一筋縄ではいかないことがわかる。

 

『兄の番人』という標題は、創世記四章に由来している。兄・弟の関係は逆になるが、カインは、弟アベルの捧げ物が神に受け入れられ、自分のそれが受け入れられないと知った時、弟を妬み、彼を殺した。「弟はどこにいるか」と聞かれると、「私は弟の番人だろうか」と答える。p.p. 312

 スタニスロースは兄の番人であった。ジェイムズがダブリンを離れた後もダブリンのことを細かく伝えたり、兄が書いた作品の助言をしたりもした。ジェイムズの死後も彼が残したメモや作品やらを大切に保管していたのは弟スタニスロースである。そして、この『兄の番人』を未完ながら記した。これによって、多くの人がジェイムズ・ジョイスの作品、とくに『ダブリナーズ(ダブリン市民・ダブリンの人々などの邦訳がある)』の理解を深めるの手助けとなった。

 

ダブリナーズ (新潮文庫)

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ダブリンの人びと (ちくま文庫)

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ダブリンの市民 (岩波文庫)

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