【読書】ドストエフスキー 『悪霊』
新潮社の文庫で上下巻、あわせて1300ページです。第一部、第二部、第三部と大きく分かれており、第一部が終わるころからおもしろくなります。ロシア文学は名前で苦労することが多いのですが、この『悪霊』はそれほど苦労することもありません。
いったい悪霊とは何かー
新潮社の下巻背表紙の説明文には以下のように書かれています。
ドストエフスキーは、組織の結束を図るために転向者を殺害した”ネチャーエフ事件”を素材に、組織を背後で動かす悪魔的超人スタヴローギンを創造した。(略)
これを読むと悪霊とはスタヴローギンと捉えることができますが、はたしてスタヴローギンだけが悪霊だったのか、スタヴローギンその人が本当に悪霊だったのか読後でもよくわかりません。
農奴解放令後の混乱するロシア、若者たちは無神論、共産主義的な思想に傾倒していきます。本作品の元ネタになったネチャーエフ事件というのは革命的思想をもった若者間の内ゲバ殺人事件のことで、『悪霊』もそれとよく似た事件が起こります。その事件が起こる過程、過程にニコライ・スタヴローギンが多く関わっているのですが、その事件に関してスタヴローギンが直接手をくだしたわけでも、指示したわけでもありません。
ニコライ・スタヴローギンは自己を破滅させるような事件を何度も起こし、その事件で周りの多くの人を不幸にしていきます。またそれを楽しむような姿も見せます。しかし、それが悪霊に取り付かれたとは言い難いような気もします。確かに周りの人間を不幸にして、それを書きとめ、神父に見せるつけるくだりはカラマーゾフの「大審問」を連想させます。
ロシアの歴史、宗教や時代背景がまだまだ浅いので読みも浅くなってしまいました。もっと知識を増やして、読み直したいと思います。