【読書】羽田圭介 『メタモルフォシス』

自分は、多くの人々に支えてもらっている。p.p.75

 

 この文章が貧しい少年が誰かに助けられたシーンだとか、苦しみながらも、それを分かち合い助け合うようなシーンで書かれていたら、とくにこの文章に気にもとめなかっただろうと思う。今回の作品『メタモルフォシス』は芸人の又吉氏と同時に芥川賞を受賞した羽田圭介氏の作品である。正直、TVに出まくっている羽田氏からは想像できない作品だった。なんだかひょうひょうとしていて、ちょっと天然気味な彼がこれを書いたと思うと、「羽田さんて本当にすごい人だったんだなぁ・・・」という感想がもれてくる。ちょっとした色物文化人くらいにしか思っていなかったのである。ごめんなさい。

 さて冒頭の文章であるが、これはある男の独白である。それもハードなSMの真っ只中の独白である。私はこの文章をSMとSMの間で発見し、そのミスマッチ具合にうなった。そしておもむろに、このページにふせんを貼った。

 

メタモルフォシス (新潮文庫)

メタモルフォシス (新潮文庫)

 

  主人公は証券会社のリテール部門で働くドMの男。普段は何も知らない年寄りに手数料のかかる金融商品を売りつけている。反面、女王様の前では犬になるのだわん。題名のメタモルフォシスは男がノーマルからドMになる話ではない。ドMから何かにメタモルフォシスするのだ。

 

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