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【読書】堀田善衞 『定家明月記私抄』

  2016年最初の読書は藤原定家の日記『明月記』を堀田善衞が抄訳したものから。

藤原定家といえば平安末期から鎌倉初期の歌人で、小倉百人一首の編者として有名です。

定家明月記私抄 (ちくま学芸文庫)

定家明月記私抄 (ちくま学芸文庫)

 

  戦中いつ召集令状が届くかもわからぬ不安のなかで堀田善衞は定家の『明月記』を手にする。本書のなかにある以下の文を目にするために。

 世上乱逆追討耳ニ満ツト雖モ、之ヲ注セズ。紅旗征戒吾ガ事ニ非ズ。         p.p.13

  藤原定家が19歳のときに書いた日記です。朝廷のゴタゴタだろうが、関東の源氏討伐だろうが耳に入ってきても、オレはカンケーねぇ!!というのが定家の気持ちなのでしょう。定家が19歳のころ、幼少の安徳天皇が即位したり、以仁王源頼政が挙兵したり、翌年には平清盛が死去するなどの大波乱な世の中でした。

 

定家のこの一言は、当時の文学青年たちにとって胸に痛いほどのものであった。自分がはじめたわけでもない戦争によって、まだ文学の仕事をはじめてもいないのに戦場でとり殺されるかも知れぬ時に、戦争などおれの知ったことか、とは、もとより言いたくても言えぬことであり、それは胸の張り裂けるような思いを経験させたものであった。 p.p.14

 

千年前の人間の悩みと現代人の悩みはさして変わらない

 堀田善衞は定家の明月記を最初から丁寧に読み込んでいきます。藤原定家も1000年後の人間に自分の日記がここまで分析され、読み込まれるなどと露とも思わなかったでしょう。だからこそ、定家の書いてある内容は大変おもしろいです。

  • 金がない
  • 子どもが言うことを聞かない
  • 出世できない、クソ!
  • 咳がとまらない(喘息の症状のよう)
  • 尿結石の症状あり?
  • 後鳥羽上皇、マジ勘弁。

 

 ざっと見るとこんなかんじです。出世が思うようにできず、恨みつらみを日記のなかに書いたり(それも結構、辛らつな言葉で)、出世ができず荘園の経営もうまくいかず、お金がなくて困っていたりと、現代人と困るところは一緒なんだなぁと思います。朝から咳がとまらないとか、あそこが痛い、ここが痛いなど体の不調を訴えています。年若の後鳥羽院の度を逸した遊興に辟易し、新古今和歌集の編纂に口を出され、思うように仕事ができずになげやりになったりなど。人間の営みなどどんなに年月を経てもさして変わらないのだなぁ、と思ってしまいます。

 それにしても堀田善衞の読み込みのすごいことに驚きます。定家の『明月記』漢文で書かれており、むちゃくちゃ読みにくい。ちなみに国書刊行会の明月記はGoogle Booksで無料で閲覧することができます。私も読んでみようと開いてみましたが、「あ、これは無理だな・・・」と、そっと閉じました。

明月記 - 藤原定家 - Google ブックス

 

 漢文の知識だけでなく、古典はもちろん当時の風俗・有職故実の知識がなければこの日記を読みこなしていくのはなかなか、しんどいと思います。

 

定家明月記私抄 続篇 (ちくま学芸文庫)

定家明月記私抄 続篇 (ちくま学芸文庫)

 

 

 

 

 

 

 

 

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