【読書】若竹七海 『猫島ハウスの騒動』

  まず、表紙をじっくり見ていただきたい。なんということでしょう。猫がたくさん。まるでねこあつめのよう!女の子に抱かれているのは猫のDC。足元にはトラや三毛や黒猫、白猫。そしてもこもこした猫まで!それもそのはず、この作品は猫が100匹以上住む猫島が舞台なのだから。ちなみに人間も30人ほど住んでいます。

猫島ハウスの騒動 (光文社文庫)

猫島ハウスの騒動 (光文社文庫)

 

  物語はナイフの刺さった猫の剥製を発見するところからはじまります。大きな事件とはいえないけれど、猫の島でそんな物騒なことがあれば騒動になります。この騒動に端を発していろいろな事件が続いて起こっていくのです。

 

 本書のようなミステリーをコージーミステリーと言うのだそう。コージーとはcozyのことで「心地よい、くつろいだ」という意味です。もしくはtea & cakeなどと呼んで殺人シーンがあっても紅茶とケーキをいただきながら読めるミステリーなのだそうです。確かに本書はグロいシーンや手に汗握るシーンというものはなく、猫が出てきてどこかほのぼのしています。とはいってもそこはちゃんとミステリー。不可思議な事件を解決したときのすっきり感はたまりません。そして猫。シャーロックホームズのワトソンばりに活躍するのかとおもいきや、この猫ちゃんたち、いたって普通の猫。活躍なんてほとんどしません。事件解決の糸口に証拠品を人間の前に都合よく咥えて持ってくるとか、ミスリードした主人公たちを助けてやるとか、猫とミステリーときいて「猫が人間の推理を助けるんでしょ?」という淡い期待と予測は大きくはずれることになります。

 でもご安心ください。猫の見せ場はちゃーんとありますよ。島の人間が誰も気づかなかった最後のなぞを解き明かすのはやっぱり猫ちゃんなのでした。

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