【読書】池上俊一 『お菓子でたどるフランス史』

 昔から、子供向けの新書が好きです。岩波ジュニア新書しかり、ちくまプリマー書しかり。今回は『お菓子でたどるフランス史』を読みました。

 お菓子は人間が生きていくうえで必要不可欠なものではありません。なくても生きていけます。だからこそ、お菓子が豊かということは生きていくうえで必要じゃないものが発展する土壌があったとイコールなわけです。ご存知フランスはお菓子大国です。お菓子が豊かになっていく過程を見ていくとフランスの歴史が垣間見えてきます。 

 そもそもフランスのお菓子じゃなかった!

 フランスのお菓子の代表といえばなんでしょう?いっぱいありすぎてひとつに絞れません。ゴーフル?ガレット・デ・ロワ?マカロン?アイスクリーム?チョコレート(ショコラ)?実はマカロンもアイスクリームもイタリアのカトリーヌ・ド・メディシス がオルレアン公アンリとの結婚の際にイタリアから連れてきたシェフによってもたらされます。お菓子だけでなくフォークを使った食事マナーも、もたらしたは彼女だそうです。

 チョコレートもフランスが有名ですが、苦いカカオに砂糖を入れたのはスペイン人、固形にして食べるようにしたのはイギリスのおかげ、という・・・なんだか夢が壊れちゃうような話なのでした。では、なぜフランスはお菓子が有名なのか。やはり砂糖が原因なのだと思われます。

砂糖の歴史は黒い歴史

 砂糖はさとうきびや甜菜という植物から作られます。さとうきびニューギニアが起源で、中国の南部、インド、シリア、エジプトなどへ伝わっていました。11世紀の十字軍遠征でヨーロッパはアラブの地で砂糖と出会います。ちなみに砂糖sugarはアラビア語のサッカルからきています。十字軍遠征で砂糖を得ますがヨーロッパの地ではさとうきびは育ちません。15世紀の大航海時代、大西洋に植民地を得たフランスはアフリカの奴隷を入植させ、さとうきび畑で働かせるのです。いわゆるプランテーションです。このプランテーションは大成功し、フランス国内の砂糖消費量は一気に増加します。この植民地プランテーションによる砂糖の供給増大がフランスのお菓子を豊かにする契機となりました。

 

 この本は『お菓子でたどるフランス史』というより『フランスのお菓子の歴史』のような気がします。フランスのお菓子の歴史をみればフランスの歴史もわかるという具合です。お菓子の歴史だけでもこれほどダイナミックなのはさすがだと思います。

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